外反母趾は足の親指の付け根の関節が外に反る症状ですが、
事の起こりは足の甲の部分にある第1中足骨という骨が内側に開き始めること、つまり足の幅が横へ広がる事にあります。
その原因は足のアーチのつぶれ、すなわちこの頑丈な構造体の破綻によるものなのです。
私たちの足には、内側と外側に縦方向に伸びる2つのアーチと、横方向へのアーチがあります。
これらのアーチは地面からの衝撃を吸収するクッションの役割や、地面を蹴り返す際のバネの役割を担っています。
外反母趾の原因
これらのアーチが生まれながらにして低い足をしている人もいますが、
加齢や体重の増加、あるいは関節リュウマチや糖尿病などの骨や靱帯が脆くなる病気が基礎にあるような場合に
これらのアーチを支える靱帯や腱が弛緩し、次第にアーチがつぶれて幅の広がった足になります。
初めのうちは親指も一緒に内側に広がっていきますが、次第に親指の先が靴に押されたり親指の付け根についている筋肉によって外側に引っ張られたりすることで付け根の関節が「くの字」に曲がっていきます。
ときに小指にも変化が現れることがあります。
足のアーチのつぶれによって足の横幅が広がると小指も靴による圧迫を受け、親指とは逆に内側に曲げられて内反小指という状態になることもあります。
外反母趾を生じさせる主な原因がこのように足のアーチのつぶれであると言えます。
さらにこのアーチのつぶれは外反母趾の原因となるばかりか他にも多くの足の障害を惹き起こす原因にもなっています。
外反母趾はなぜ女性に多いのか?
最近では女性の半数近くに外反母趾があると言われています。
女性の発生率はなんと男性の約10倍にものぼります。
女性に外反母趾が多いのは一般に女性の方が男性より骨や関節などの骨格が柔らかくアーチを支える筋力も弱いためと考えられます。
関節の弛緩性は女性ホルモンに影響されるという説もあります。
さらに拍車をかけるのは靴です。
特にハイヒールはかかとが高く、つま先が細いので重心が足先にかかり足が横に広がりやすくなります。
外反母趾の外的要因・内的要因
外反母趾の発症には「内的要因」と「外的要因」があります。
内的要因で発症しやすい人
・両親、祖父母のどなたかが、外反母趾や幅広の足である場合(遺伝的要因)
・生まれつき足の親指が第2趾よりも長かったり、第1中足骨頭が丸い形をしていたりする場合(形態的要因)
・女性である場合(性別的要因)
・関節弛緩を生じる疾患、関節リュウマチや糖尿病などを合併している場合(合併的要因)
外的要因で発症しやすい人
・足に合わない靴を履き続けている場合(物理的要因)
・足の骨格形成に重要な幼少期に靴ばかり履かせていた場合(環境的要因)
・歩く機会が少なく筋力が弱くなってしまった場合(生活習慣的要因)
あなたの足は健康ですか
足は体のバランスを取る重要な土台です。建物と同じで土台がぐらつくと知らず知らずのうちに全身に悪影響が現れます。
つまり足が痛いと無意識のうちに足をかばう姿勢や歩き方をするため、身体の各関節に歪みや荷重軸のずれが生じ、膝の痛み腰痛、さらには肩こり、頭痛ときにはイライラやめまいなどの精神症状までも引き起こすことがあります。
この足のバランスを保つために必要な足裏の縦アーチや横アーチがくずれると扁平足になり、さらに悪化すると外反母趾になってしまいます。
外反母趾の有無をチェックする
- 母趾の先が第2趾の方に曲がっている
- 母趾の付け根が出っ張っている
- 足裏の第2趾の付け根などに胼胝ができている
- 母趾以外の指が屈曲していて指の背に胼胝ができている
- 第2趾や第3趾の付け根が脱臼し指が背側に持ち上がっている
- ヒールを履いて歩くと痛いところがある
- 指同士がくっついて先細りに縮こまっている
- 足が平べったくなり、横幅が広がっている
いかがでしたか?
2つ以上当てはまる方は次の外反母趾角をチェックしてみましょう。
外反母趾角のチェック
- 白い紙を用意しその上に立ちます
- 出来るだけ体重を乗せ、下記のイラストのように定規をあて線を引きます
- 分度器で親指が曲がっている角度を測ります
外反母趾角チェックで、角度が15度以上の場合は外反母趾になりかけています。
足裏の筋肉を鍛える
足裏の筋肉が弱り足が体重を支えられなくなると、
足のアーチが崩れ、結果として外反母趾へと進行する可能性があります。
足の指でタオルを引き寄せる運動、ゴム紐を用いた運動などを行い日常的に足裏の筋肉を鍛える努力をしましょう。
また裸足で歩いたり、下駄やサンダルなどの鼻緒のある履物を履いたりするのも足裏の筋肉を鍛えるひとつの方法として有効です。
さらに足指のストレッチを行い曲がった親指の関節の拘縮を予防することも大切です。
足の体操
初期の外反母趾対策、外反母趾の進行を食い止めるため、予防のためにお勧めの体操をご紹介します。
ホーマン体操
ホーマン体操は足の親指についていて、親指を閉じるとともに横のアーチを支えるための筋肉である母趾内転筋を鍛えます。
足の親指同士に太い輪ゴムをひっかけてかかとを合わせたままでお互いに引っ張り合い、5~10秒キープします。これを20回程行います。
タオル寄せ体操
タオル寄せ体操は足の裏にある縦アーチを支える筋肉を鍛えます。
椅子に座り床に敷いたタオルを指でたぐり寄せます。数回繰り返すことでより効果が上がります。
ストレッチ
ストレッチでは、足の親指の付け根の関節を外に引っ張りながらストレッチをします。
ここで気を付ける事として、ただ単純に親指だけを引っ張ると同時に第1中足骨が引っ張られないように足を手で握りしめた状態で親指を引っ張りストレッチをしましょう。
30回程度を目安にやると良いでしょう。
外反母趾への対応
病院で外反母趾と言われた場合、どのような対応があるのでしょうか。
病院で出来る外反母趾への対応は
「保存療法」と「手術療法」の2つがあります。
中には最初から手術すればいいと安易に考える方もおられるようですが、十分な保存療法も行わずに最初から手術療法を選ぶことは避けるべきです。
多くの場合は適切な保存療法で症状の改善が期待できます。手術は保存療法をやり切っても改善出来なかった時の最終手段であるべきです。
また外反母趾の大元の原因は足のアーチのつぶれなので、手術しても曲がった骨の矯正は出来ますが根本療法にならないということもいきなりはお勧めできない理由です。
アーチサポート
外反母趾の根本原因はアーチの潰れなので、アーチを足底板でサポートすることが大切です。
テーピングも悪くはないのですが、皮膚の弱い人はかぶれ易いし、毎日できないというデメリットがあります。
ただ、アーチの形は人によって違うので、できれば既存のものでなくオーダーメイドで作成したものをお勧めします。
アーチサポートによる効果は
- 外反母趾などの足の変形の進行予防効果
- 痛みや痺れ、胼胝形成などのアーチの潰れが原因となる症状の改善効果
- 歩きやすく疲れにくくなるといった歩行の改善
- 外反母趾の曲がりやアーチのつぶれなどの角度の改善効果
などが期待されます。
足に優しい靴選びのポイント
外反母趾の改善・予防には靴選びも重要です。
足の骨格は内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つのアーチ構造を形成しています。
このアーチ構造が歩く時の衝撃を吸収したり蹴り返し動作の際の力を出しやすくしたりといった重要な役割を担っているのです。
アーチがつぶれると足裏の本来体重がかかるべきでない部位に負荷がかかってウオノメや胼胝が出来たり、つま先の横幅が広がって外反母趾を引き起こします。
つまり足にやさしい靴を選ぶにはこれらのアーチ構造を保護するようなものを選ぶ事が重要です。
また靴選びは足がむくんでいる夕方に行い、確認時はできるだけ3~5分間は履いたままで動作を確認しましょう。
①土踏まず部分がフィットしている
足の縦アーチを支えるためのパットがあることが理想ですが、高すぎて土踏まずが痛くなったり甲が窮屈になったりしない程度のものが理想です。
②歩いたときにかかとが上下しない
足のかかとのカーブと靴のかかとのカーブが合っていないと靴擦れを起こしたり靴が脱げやすくなったりします。歩いたときかかとが靴の中で上下しないかどうかチェックしましょう。
③靴のサイズは横幅も念入りにチェック
履いてみて横幅が狭いと感じたり、甲や小指が圧迫されていると感じたりしたら、その時点でその靴はあっていないと判断しましょう。履いた時、靴の最も幅広い部分と足囲が一致しているか確認しましょう。
左右でサイズが異なる人は大きい方のサイズで合わせること。足の形に合わせてサイズを微調整できる紐やベルトの付いた靴がよりお勧めです。
④指が自由に動かせ、圧迫感がないこと
かかとをぴったり後ろにつけた時、靴の中でつま先に1㎝ほどのゆとりがあるものを選びましょう。
およそ全ての靴のつま先は多かれ少なかれ細くなっているので、1㎝ほどのゆとりがつま先にあれば、5本の指は余裕をもって靴の中に納まることが出来ます。
⑤トップラインがフィットしているか
トップラインとは靴の履き口のことです。トップラインに隙間や食い込みがないか、外くるぶしにあたっていないかチェックしましょう。隙間があると歩いているうちに足が前にずれてしまいます。きつ過ぎると足背の神経が圧迫され足の甲が痛くなって痺れたりします。ちなみに靴を脱いだ時に足の靴のラインが残るのはトップラインが足に食い込んでいる証拠です。
足にあわない靴を履き続けていると・・・
合わない靴を履き続けていると次のように怖い障害になることもあります。
ハンマートゥ
長さが短い靴を履いていると、足指の関節がハンマーの形のように折れ曲がり、戻らなくなります。指の腹や背の頂上部分が常に靴とこすれるため、胼胝やウオノメができて痛みを伴います。
中足骨頭部痛
幅の広すぎる靴を履いていると、横のアーチが潰れ、地面を蹴り返して歩くたびに指の付け根、特に第2趾辺りが地面に当たり、次第に腫れあがり悪化すると硬い胼胝が形成され激痛をもたらします。
内反小指
先の細い靴を履いていると小指が内側へ曲がり、張り出た付け根に胼胝が出来ます。歩くたびに第4趾に踏まれ小指の腹部分が三角形に変形したり硬い胼胝が出来たりします。
ウオノメ・胼胝
合わない靴で歩くと、摩擦などで皮膚が硬化、角質が肥厚して胼胝になります。またウオノメは肥厚した角質が皮下に向け尖っている状態になり激痛をもたらします。
高齢者の靴選び
高齢者の靴選びはくれぐれも慎重にしたいところです。
年をとると転びやすくなります。しかも高齢者の転倒では深刻な事態を惹き起こす恐れがあります。
それらの弊害がおきないように、高齢者の靴選びについて特に気を付けるポイントをまとめました。
- 靴ひもタイプを選ぶ事
足をしっかり固定するため、靴ひもやベルトタイプを選ぶ事。さらにチャックがある靴の場合一度しっかり紐を結べば脱ぎ履きはチャックで出来るので便利です。
- 足首まわりが柔らかいものを選ぶ事
靴と足首のカーブが合わないと靴ずれを起こしてしまうため、足首をおおう生地はクッション性のある柔らかなものを選ぶ事です。
- かかとの後部の芯が硬いものを選ぶ事
体重の約7割がかかとにかかるため、かかとの後部にしっかり芯が通った硬い靴の方が歩きやすいと言えます。また脱げにくいよう、すっぽり足をおおえる深さのあるものを選ぶことも大切です。
- 土踏まずにしっかりフィットすること
高齢になると足の縦横アーチがつぶれることで転びやすくなります。土踏まずがしっかりフィットしていれば足本来の働きを蘇らせる効果が期待できます。
- 指の付け根辺りは曲がりやすい方が良い
靴底は、接地面積が広く滑りにくい素材で適度に硬い方が歩きやすいと言えます。しかし、高齢者の場合は動きやすく転びにくい靴が良いので指の付け根あたりの底は曲がりやすいものをお勧めします。
- つま先がやや上向き
高齢になると筋力が弱まるので歩行の際に足が上がりにくくなっていきます。そのためちょっとした段差でつまずきやすく転ぶことも少なくありません。つま先が少し上向きの靴を選ぶことによってつまずきの防止になります。
- つま先に1㎝のゆとりがあること
多くの靴は先端が細くなっています。高齢者の靴に限ったことではありませんが、つま先に1㎝のゆとりがあると5本の指が重なることなく外反母趾や巻き爪の予防にもなり、また健全なアーチの保持にとって大切な隙間です。
どうしてもハイヒールを履くのなら
外反母趾予防のためにはハイヒールは履かないことがおススメです。
しかし、ハイヒールは良くないと思っていても仕事上履かなければならない場合などがあると思います。
どうしてもハイヒールを履かないといけない場合は次のような事に注意して下さいませ。
- ヒールの高さは5㎝まで
- ウィッズ(親指と小指の付け根を結んだあたり)がぴったりしていること
- 高いハイヒールの場合はある程度太さのあるものを選びましょう
- 靴の中張りの材質チェック。足が前に滑りにくいもの
- 三角形よりラウンド型かスクエア型がお勧めです
- 革が柔らかく親指の付け根に縫い目がないこと
- かかとがフィットしていて内底にアーチを支える膨らみがあるもの
- 足首ストラップ付
- 足の甲はできるだけ隠れるに越したことはありません
外反母趾と他疾患
外反母趾は進行するとやがて普通の靴でも違和感を感じるようになり、歩くだけで痛みが出るようになります。
そして足首や膝の痛み、下肢全体の疲れやすさなどの症状が出現しやがて腰痛、肩こり、頭痛などを惹き起こす可能性もあります。
さらにひどくなると慢性疼痛がストレスとなり自律神経にも影響が及び、様々な精神障害や胃腸などの機能低下にまでつながってしまう恐れがあるのです。
ここでは上記以外にも起こり得る、外反母趾に合併することの多い、その他の足部疾患についてまとめてみます。
・モートン病
・足底筋膜炎
・巻き爪・陥入爪
・有痛性外脛骨
などがあります。
まとめ
外反母趾はひどくなると手術まで必要になってしまう場合もありますが、そこまでいかない外反母趾の痛みは改善が可能です。
変形した形状は変わらずとも、アーチをサポートしたり、足裏・ふくらはぎの筋肉を強化したり、靴を改善したり。
我々のような整体院・鍼灸院にいって患部周辺の関節を柔らかくすれば体重を分散させることが出来て症状や進行を防ぐことが出来ます。
外反母趾の痛みにお悩みの方はあきらめずに対策されることをおススメします。