深夜に突然、ふくらはぎの筋肉がつって激痛に襲われる
「こむら返り」
多くの人が悩まされている事と思います。
一説では中高年男女の半数以上が日常的に夜間の痙攣を経験していると言われています。
このこむら返りはなぜ起こるのか?
脱水や電解質異常、神経系統や筋肉の異常などさまざまな要素が複雑に絡み合って発生するものと考えられています。
今回はこのこむら返りについて書いていきたいと思います。
ふくらはぎのこむら返り
こむら返りの緊急対処法はふくらはぎをゆっくり伸ばす
「ひざ裏伸ばし」が有効です。
なぜ伸ばすのが良いかというと
筋肉や神経の細胞は、十分な血流によって血管を通じて絶えず酸素やミネラルが供給されていないと正常に働くことが出来ません。
こむら返りを起こしてしまうとふくらはぎの筋肉がギュッと縮んでしまうため、血管も締め付けられて血流が滞ります。
なのでふくらはぎをゆっくり伸ばすことで筋肉がほぐれ下肢に血流が良くなると
つった筋肉に十分な酸素やミネラルが供給され神経伝達も回復し、こむら返りが解消されるのです。
伸ばすときはゆっくり、やさしくだましだまし伸ばしてください。
こむら返りが起こった方の足を前に出して座り、片手で足のつま先をつかんでゆっくり手前へひっぱりふくらはぎを伸ばします。
これを筋肉のつりが解消され痛みが和らぐまで続けます。
就寝中に足がつると痛みに驚いて慌てがちですが、まずは落ち着くことをこころがけ、ゆっくり、じんわり伸ばしてください。
こむら返りは冷やした方がいいか
冷やしてはいけません。
こむら返りの最中に冷やすと、さらに悪化する可能性があります。
冷えはこむら返りを誘発する要因です。冷えると筋肉や血管は収縮して血流が悪くなり、酸素やミネラルなどが筋肉や神経に十分に行き渡らずこむら返りが悪化します。
こむら返りが起こったら、できるだけふくらはぎを温めた方が血流が良くなりつりが早くおさまる効果があります。
手でさすってもいくらか温まりますが、ホットタオルやドライヤーの温風を当てたり冬なら暖房器具を使ったり、可能なら足湯や温水のシャワーで温めたりするのもおススメです。
こむら返りとはどういう状態か?
こむら返りは難しく言うと有痛性筋痙攣とよばれます。
こむら返りの語源は古い言葉でふくらはぎをこむらと呼んでいたことが由来だそうです。
どういう状態であるかを単純にいうと、筋肉がつっている状態とは、センサーの誤作動によって歯止めを失った筋肉の暴走です。
筋肉や腱が縮み過ぎたり伸びすぎたりして傷まないように人体全ての骨格筋にはセンサーが備わっています。
センサーには筋肉中にあって筋肉の伸びすぎを監視する筋紡錘と腱と筋肉の境目にあって腱や筋肉の伸びすぎ縮み過ぎを監視する腱紡錘の2種類があります。
これらには伸張反射と自己抑制という仕組みがあるのですが、これは脳による認知や判断を必要としない脊髄反射で普段は意識しなくても上手く働いてくれています。
ところがミネラルバランスの崩れなど、様々な要因からこれらのセンサーの働きが低下し、暴走した筋肉がこむら返りを起こすのです。
なぜふくらはぎの筋肉がつりやすいか?
ふくらはぎの筋肉がつりやすい理由は
①抗重力筋である
筋肉のつりはふくらはぎ以外でも起こりますが、
中でも抗重力筋といって、地球の重力に対して姿勢を保つために働く筋肉でよく起こります。
抗重力筋は自然に立ったり座ったりしているだけでも常にどこかで緊張しているので負担がかかりやすいのです。
中でもふくらはぎの下腿三頭筋という筋肉は疲れやすい筋肉なのでこむら返りが起こりやすいのです。
②心臓から遠い
ふくらはぎは体の最も下の方、心臓から遠い位置にあります。
体液がたまってむくみやすく血流の停滞が起こりやすいので、そこから冷え、酸素不足、ミネラルバランスのくずれなどを招きこむら返りが起こりやすくなります。
③冷えやすい
冷たい空気は下の方にたまるので、冬はもちろん夏でも意外に足元が冷えることがあります。スカートや短いパンツなどで足を出していると特に冷えやすくて、つりやすくなります。
④就寝中の体温や姿勢
就寝中は体の末梢の体温が下がりやすい事
寝返りを打つ際に足が寝具の外へ出るなどして冷えやすい事
仰向けに寝ると掛布団の重みで爪先が下がりふくらはぎの筋肉が収縮しやすいこと
も原因となります。
筋肉のけいれんはふくらはぎ以外でも起こります。
手足の指、腕、太もも、土踏まず、首や肩、背中、腰、お尻の筋肉もつることがあります。
こむら返りチェック表
こむら返りが起こる時は、多くの場合加齢や運動不足からくる筋肉量の減少や血流不足や冷えに加えて、水分不足、薬の影響など様々な要因が複合的に影響していると考えられます。
下の「こむら返りチェック表」を参考にしてみてください。
- 最近、運動を始めた
- 運動習慣がない、あまり歩かない
- 食生活が偏りがちである
- 水分はコーヒーや紅茶、緑茶でとっている
- 冷え性である
- お腹を下しやすい
- 足がむくみやすい
- 入浴はシャワーで済ますことが多い
- 喫煙者である
- お酒をよく飲む
- 仕事などでストレスを感じることが多い
年を取るとこむら返りが起こりやすくなるのはなぜか?
①筋肉量の減少
人は20代をピークに年をとる程筋肉量が減少していきます。
足は第2の心臓といわれるように、下肢の筋肉は歩行などで伸縮してポンプのように働き血液を心臓に送り返し体中に循環させる働きをしています。この筋肉による循環の働きが衰えるとつりやすくなります。
②筋疲労の蓄積
血流の悪化による酸素やビタミン・ミネラルなどの栄養素不足は筋疲労を招きます。1日の終わりには筋疲労が蓄積していますが加齢により代謝が悪くなると疲労回復が遅れるため、特に睡眠時のこむら返りの原因となります。
③動脈硬化
中高年は動脈硬化を起こしているケースが少なくありません。
これにより血流が悪化するとこむら返りを招きます。
④病気や薬の影響
高齢になると増える生活習慣病や腰椎の病気が原因になることがあります。一般に高齢者は薬の服用機会が多く、これが原因になることもあります。
こむら返りを予防するために
加齢によるこむら返りもあきらめる必要はありません。
出来ることはいくつもあるので、ぜひ改善に臨んでください。
高齢者のこむら返りの場合は、血流の悪化や筋疲労の蓄積、動脈硬化、病気や薬の影響などの原因が複合的に絡み合って起こると言われています。
中でも高血圧症、糖尿病などの生活習慣病や腰椎の病気(腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなど)があれば、まずはその改善を積極的に行いましょう。
病気が改善することでこむら返りも治まることが期待できます。
薬の副作用でないかも主治医に確認してみることもいいと思います。
こむら返りの予防・改善に運動療法は効果的です。
こむら返りが頻発する人には下肢の裏側が硬い人が多いからです。
これは電解質異常によって筋紡錘・腱紡錘が衰え、筋肉の収縮・弛緩をうまくコントロールできず収縮した状態で硬直しているからです。
運動することで血流が良くなると、老廃物や疲労蓄積物質が排出されやすくなるうえ、下肢の冷えも解消されます。これによりこむら返りの予防につながります。
またこむら返りの原因の一つであるミネラルバランスの崩れも血流が良くなると改善してきます。
運動としてはストレッチが最適です。硬く委縮した筋肉を伸ばすと腱紡錘と脊髄の間で筋肉の収縮を抑制するメカニズムが働き、相互のコミュニケーションが良くなります。
筋肉をほぐしながら血流をよくし、筋肉量を増やす事にもつながります。下肢の筋肉が増えれば全身の活動量がアップし、さらに好循環が生まれます。
運動はいつすれば良いか?
ハイキングなどで長時間歩くときや、ゴルフや水泳などのスポーツをする時、立ち仕事をする時などは筋肉に負担がかかってこむら返りを起こしがちです。
準備運動としてストレッチや軽い運動で筋肉をほぐしておくと筋肉が温まって血流がよくなるのでこむら返りを予防できます。
ストレッチに関しては運動前にも後にも行えばよいですが、
どちらかというと運動後のストレッチの方が大切です。
運動後のストレッチの方が筋肉は柔らかくなっていて伸びやすいですし、疲労物質の排出や筋疲労の回復に効果的です。
その他にも、長時間座った後の運動もこむら返りの予防に効果的です。
座り姿勢は体重で太ももの裏が圧迫され血流が悪くなるからです。長時間の運転も同じこと。時々休憩をとって立ち上がり、ひざ裏や太ももの裏を伸ばしてあげて下さい。
夜中のこむら返りを予防するには就寝前のストレッチも効果的です。体が温まった入浴後に行うのもいいでしょう。
その際水分補給もセットで行うとより良いです。
軽いストレッチなどは汗をかかないので自覚がないかもしれませんが、体を動かすと体温が上がって皮膚から水分が蒸散し体内の水分は確実に失われています。
水分不足はこむら返りの要因の一つなので注意してください。
摂取する水分は利尿作用のあるカフェインを含むお茶やコーヒーではなく、ミネラルウォーターが一番良く、適量ならスポーツドリンクもおススメです。
水分補給はどのようにするか
水分補給の基本は『こまめに早めに』です。
まとめて水分をとっても不要分は排泄されてしまうし、体内のミネラルバランスをくずす恐れもあるので、こまめな補給の方が良いのです。
成人が1日に補給しなくてはいけない水分は諸説ありますが体重×30㎖です。
飲む量は図りづらいのでコップ1杯は200gとして計算してみて下さい。
飲むタイミングは
①起床時
②朝食時
③朝食と昼食の間
④昼食時
⑤昼食と夕食の間
⑥夕食時
⑦入浴後
⑧就寝前
です。
飲酒をされる方は特に注意して下さい。
アルコールは利尿作用がある事と、アルコールの解毒に水分が取られることから水分不足を招きます。
さらに水分だけでなくビタミンやミネラルも消費されるためこむら返りは助長されます。
アルコールをよく飲まれる方は、より注意して水分補給を意識して下さい。
靴下をはいて寝た方がいいか?
睡眠中のふくらはぎの冷えはこむら返りにつながります。
冬だけでなく夏でもエアコンなどによる足の冷えは大敵です。
ふくらはぎを覆う長さのある靴下をはいて寝れば、寝ている間に掛布団を蹴ってしまったり寝返りを打って足が布団の外へ出てしまったりしても冷えを予防することが出来ます。
なので靴下などでふくらはぎを保温して寝ることはお勧めします。
ただ寝つきの良くない人は足先からの放熱や汗の蒸散を妨げない爪先が開いたタイプのハイソックスかふくらはぎだけを包むレッグウォーマーがおすすめです。
爪先まで温めた方が良いのではと思うかもしれませんが、
人間の体は手足から汗が蒸散することで体の深い部分の温度を下げ、深い眠りに入るという仕組みがあります。
足先の末梢血管からの放散がうまくいかず深部体温が下がらない場合は寝つきが悪くなってしまうので、その場合はふくらはぎだけを温め、爪先は解放できるようにして下さい。
弾性ストッキングも同じで、就寝中に履くならひざ下までを覆うハイソックスタイプで足先からの汗の蒸散を妨げないよう爪先のないものがおススメです。
〇立ち仕事の多い人
〇運転やデスクワークで座る時間の長い人
で足のむくみに悩む人は多いです。
すねを手の指で数秒間押し、手を離して10秒以上たってから指で撫でてみてへこみが解消されないならむくみがあるので弾性ストッキングはお勧めです。
そのまま寝ると締め付けがつらい場合は就寝直前まではいて過ごし、床に入る時に脱ぐようにしましょう。
こむら返りを防ぐための食事で気を付けること
毎日バランスよくミネラルをとることが重要ですが
その中でも特に注意したいのがマグネシウムとカルシウムのバランスです。
マグネシウムとカルシウムのバランスはマグネシウム1に対しカルシウム2の比率が理想です。
現代の食事は海藻や雑穀の比率が減ってきているためマグネシウムの摂取量が減っています。
マグネシウムが豊富に含まれるのは納豆や豆腐などの大豆食品、魚介類、海藻、ナッツ類、玄米などです。
特に注目したいのはスルメです。
スルメに含まれるマグネシウムは比率が高く、他にもタウリンが含まれていて、タウリンには筋肉の痙攣を防ぐ効果もあるので気軽なおやつやおつまみとしておススメです。
ゴマやナッツもおススメですし
お酢にはミネラルの吸収を助けるクエン酸が含まれているのでさらに効果的においしくマグネシウムをとることができます。
またカルシウムもマグネシウム同様平均的な日本人の食事では不足しがちな栄養素です。
日本の水はミネラル分の少ない軟水であることや食生活の欧米化が原因であると言われて久しいですね。
こむら返りを防ぐためにはカルシウムもしっかりと摂っていきたいところですが、カルシウムが多く含まれる食品は
・乳製品
・小魚
・大豆食品
・ゴマ
・ナッツ
などがあります。
先程もお話しした
マグネシウムとカルシウムのバランスはマグネシウム1に対しカルシウム2の比率が理想
ということを意識して摂取していってください。
クエン酸が良いと聞きましたが・・・
梅干しやレモンの酸っぱいもとの味はクエン酸です。
クエン酸にはキレート作用といって
カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを溶けやすく吸収しやすい形に変える働きがあります。
こむら返り予防のためにはぜひ取り入れたい栄養素です。
昔からクエン酸を多く含む梅干しは
『こむら返りの薬』と言われてきました。
梅干しは保存がきくし持ち運びしやすいので
日本の登山家は登山中の足の筋肉のつりを防ぐため必ずと言っていいほど山に持っていくと言われています。
クエン酸には疲労回復の効果もあるとされているので登山やスポーツ時に最適な携行食の一つと言えます。
梅干しが苦手なら梅と氷砂糖、お酢を入れて梅酢をつくってみるのも一案です。梅酢を水や炭酸水で割れば爽やかな梅酢ドリンクが出来上がります。
スポーツドリンクはどうですか?
スポーツドリンクには水分と、汗をかくと失われる塩分の他、各種ミネラル、ミネラルの吸収を助けるクエン酸、腸に作用にて塩分や水分を吸収しやすくする糖類なども含まれています。
汗をかいたときにスポーツドリンクを飲めば汗とともに失われた水分やミネラルを補給できます。
ただし、500㎖のスポーツドリンクには20~30gもの糖分が含まれていりものもあり、毎日飲み続けていると糖分の摂りすぎになりかねません。
また人間の汗ほどのミネラル量はないので大量に汗をかいたときはさらにミネラル補給が必要です。
似た飲料に経口補水液がありますが、こちらは水にミネラルとブドウ糖を一定の割合で配合し、体液とほぼ同じ浸透圧になるように調整されています。
吸収率が高く吸収速度が非常に速いという特徴があるため「飲む点滴」
とも言われており、暑さ・発熱による大量発汗、下痢、嘔吐などによって脱水症状が現れたときの水分補給に適しています。
経口補水液はスポーツドリンクに比べ塩分が多く含まれているので、汗をかいていないのに常用したり一度に大量に飲むことはお勧めできません。
大量に汗をかいたときだけ飲むようにしましょう。
こむら返りは腰部の異常でも起きますか?
腰部脊柱管狭窄症は腰椎の脊柱管が狭くなり神経が圧迫される病気です。
腰部脊柱管狭窄症をお持ちの方の約7割にこむら返りがみられるという報告もあり、そのほとんどが就寝中に起こる。頻度としては週に1回以上といわれています。
腰椎の障害がこむら返りに繋がる理由は腰と足に密接な関係があるからです。
まずは神経から見てみると、坐骨神経が腰椎と足とつながっていて、筋肉もふくらはぎの腓腹筋からハムストリングス、大腰筋と腰椎に繋がっていきます。
腰部脊柱管狭窄症になると腰を丸めると症状が楽になるためどうしても前かがみになりがちです。
すると体のバランスを取るためにおのずと下肢の裏側(腓腹筋など)が緊張し筋疲労を起こします。
この筋疲労がこむら返りを起こすのです。
糖尿だと足がつりやすいですか?
糖尿病で高血糖が続くと活性酸素が大量に発生し血管の細胞が傷つけられます。
人体には修復作用がありますが、それが追いつかなくなると血管壁が厚くなり血管が挟まって動脈硬化を起こし血流が悪くなります。
血流の悪化はこむら返りの原因となります。
糖尿病発症から年月が経つと末梢神経の細胞が傷ついてしまうことがあり、
末梢神経が傷つくと神経の働きが悪くなりさまざまな症状が現れ、筋肉の収縮・弛緩のコントロール機能が低下して筋肉のつりが頻発するようになってしまうこともあります。
糖尿病腎症でも腎機能が低下して腎臓で老廃物をうまくろ過できなくなり電解質異常を招いて筋肉のつりに繋がることもあります。
まとめ
ここまでこむら返りについてさまざま書いてまいりましたがまとめますと
こむら返りの起こる原因は主に
〇筋肉量の減少
〇筋疲労の蓄積
〇動脈硬化
〇病気や薬の影響
である
そしてそれらに対して効果的なのは
〇運動する事
〇疲労回復のためミネラルなど必要な栄養補給をすること
〇動脈硬化や病気を予防するため食生活に気を付ける事
です。
その他にも
・足を冷やさない(必要であれば寝る時にレッグウォーマーを使う)
・水分をしっかり補給
・クエン酸をとる
・スポーツドリンクは適量は良いが飲み過ぎない
・腰のトラブルから来ることもあるので腰部を柔らかくしておく
・病気にならないように生活習慣を見直す
ということが当てはまると思います。
夜中に足がつってしまうのは睡眠を妨げ、非常に不愉快なものです。
上記の対策が少しでもお役に立てましたら幸いです。